「鼻が利く」という言葉を一度も耳にしたことがないという人は少ないだろう。
人や犬、猫など様々な動物に共通して存在する「嗅覚」。人は嗅覚があることで食事を美味しく食べることができたり、古くなった食材が食べれるかどうかの判断ができたり、香水など香りを楽しむことができる。
様々なところで活用されている感覚だが、「嗅覚」が優れている動物というと犬が真っ先に思い浮かぶ人が多いのではないだろうか。
今回はそんな「犬の嗅覚」に秘められた能力について解説していこう。
◆犬の鼻の特殊な形状
まずは、その特殊な鼻の構造について説明しよう。
犬の鼻は空気を吸い込むと小さな組織のひだで気流が二手に分かれる。一つは呼吸用、もう一つはにおいを嗅ぎ取る専門だ。
においを嗅ぎ取るほうの気流はにおいを感じ取る細胞である嗅覚受容細胞を満たす
。そして、吸うだけ、吐き出すだけの人間の鼻と違い、犬は息を吐き出すときに鼻のわきにある開口部(切れ目)から空気を吐き出すため、人の鼻では怒らない空気の流れが生まれる。
この空気の流れが新たなにおいの分子を引き込み、何度も嗅ぐことでにおいを凝縮するため、敏感ににおいを感知することができるのだ。
また、犬の嗅覚受容細胞は約3億個存在すると言われている(ちなみに、人間は約500万個)。
さらに、人は二つの鼻孔から空気を吸い込み、吐き出しているが、犬はそれぞれの鼻孔でにおいを嗅ぎ取る能力がある。それにより、立体的ににおいをかぐことができるので、においの元の方向が分かるのだ。
◆脳にある巨大な嗅覚野
鼻の構造は今までお話ししたとおりだが、脳に存在する嗅覚野にも人と違いがある。
犬の嗅覚系は相対的にヒトの何倍もの領域を占めている。このような鼻の構造や嗅覚野のおかげで、多様なにおいをかぎわけ覚えることが可能なのだ。
犬はにおいの分子をヒトに比べ1憶分の1以下の量までとらえることができる。イメージとしては、人が狭い部屋で香水の匂いを感じ取れるとしたら、犬は大きなスタジアムでも可能で、原材料まで嗅ぎ分けることができる。
だから、ひとたび通りに出れば、どの人が道を歩いているのか、どんな車が走っているのか、ゴミ箱の中身は何なのか、木の種類やその木についている虫や鳥の種類まで分かる。
なぜなら、それぞれに特有のにおいがあるためだ。
それがなんであるか、どこにあるのか、どこに向かっていくのかすべて分かるのだ。
◆感知できるのはにおいがあるものだけじゃない⁉
これまでの説明で、犬の鼻がどれほど敏感ににおいを感じ取れるかお分かりいただけただろうか?
しかし、犬の鼻はにおいのしないものまで感知することができる。ホルモンだ。
犬は鼻鋤骨器官という口蓋にある器官で様々な動物が放出するホルモンを感じ取ることができる。そのため、友好的な動物か敵対している動物か、人に対して怒りや悲しみなどの感情はホルモンの雲として現れるので、その人が怒っているのか悲しんでいるのか、妊婦かどうか、体を壊しているかどうかまでわかるのだ。
◆犬は嗅覚で過去と未来もわかる
犬の嗅覚は時間を超越することもできる。
人が通った残り香で、誰がどこに向かっているのか、車のぬくもりで今までどこにいたのか、何をしていたのか、木や電柱などについている残り香で誰が何を食べていたのか、どう感じていたのかもなどの過去がわかる。
風向きによっては誰が向かってきているかなどの未来もわかる。
この記事を通して、犬の鼻に秘められた能力についてご理解いただけただろう。
人が視覚や聴覚でなにかを判断するのと同様に、犬はいつでもにおいをかいで状況を判断するのだ。
そして、嗅覚だけで様々なことが判断できるのだ。
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